ぶらやまだ

日々のなかに遊び心を。自分らしさ探求中。

会社を辞めていったその人は今日限りで辞めるなんていうそぶりも見せずに、静かに去っていった。いつも帰るようにごく自然に。ボクはその人の最後をきっと忘れないだろう。そこにあの人がちゃんといたから。

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会社を辞める人は最終日に

お菓子を配って回るというのが恒例の行事になっている。

 

だから、その行事があってはじめて

その人が今日限りで辞めるということを知る。

笑っちゃうけど、誰が決めたか知らないけど、

ここではそういう習わしになっている。

 

けれど、今日会社辞めていったその人は

今日限りで辞めるなんていうそぶりも見せずに

自分で配って回ることを避けて、

お菓子を預けて静かに去っていってしまった。

いつも帰るように、ごく自然に。

 

ボクはそれに愕然とした。

 

静かな人だった。

目立たない人だった。

影がうすい人だった。

ボクはあの人がいつからこの会社で働いているのかさえ知らなかった。

ボクはあの人がどこから通っているのかさえ知らなかった。

ボクはあの人のことをほとんどなにも知らなかった。

 

でも、最後の最後にあの人はちゃんといた。

最後の最後であの人は「意思」を表明したんだとボクは思った。

たとえそれが習わしに沿わないことだとしても。

 

ボクはあと何年かしたら他の人のことを忘れてしまうんだと思う。

けれど、あの人の最後の意思表明だけは

きっと忘れないんだろうなって気がするんだ。

 

 

人間ってほとんどたいていのことを忘れていく。

忘れていくことも脳みその大切な働きらしくて。

でも、そのなかでも忘れないこと、

正確には忘れていたと思っていたけれど、

ふとあるとき思い出すことがある。

 

それって今日のことのように、

その人の中身があらわになったときじゃないかって思う。

 

 

お仕事、お疲れさまでした。

 

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